カテゴリ:ウチナーグチ(沖縄語)( 10 )   

使えるうちなあぐち会話 暗記例文集   

(この記事は2年前程に書き始めたのですが、
 諸事に紛れて解説を殆ど書かないまま今に至ってしまいました。
 ただ、例文としては有用だと思うので公開します。
 もし需要があるなんてことがあれば(笑)、順次簡単な解説を加えていきたいと思います)


この会話講座、例文を完全に覚えてもらうことで
自然に文法知識が自然に自分のものにする方式を採用しようと思います。 
例文を丸暗記ではなく構造も含めて記憶することで、
例文の名詞や動詞を適宜入れ替えることが可能になり、
口頭作文ができるようになる、という寸法です。
ですので、例文をまずは記憶し、ついでその構造を理解することは必須です。

この暗記例文集では、うちなあぐち修得の最大のヤマである動詞変化の基本3形を
一気にさらってしまいますので、理解しながら覚えるのはなかなか大変です。
(逆に名詞に関してはあまりうちなあぐち固有のものを控え目にすることで
 負担の軽減を図っていますが)
逆にこれさえマスターしてしまえば、
あとは毎回ちょっとの事項を覚えるだけで、
どんどん表現の幅が広がる楽しさを実感できるはずです(と思う…)。
そういうわけでちょっと少なからずハードですが、
うちなあぐちを勉強したは良いけれど、なかなか話すことができない人は、
ぜひこのトレーニングにチャレンジして欲しいなと思います。

なお、本記事は大和人が書いているので、
例文も不自然な部分もあると思います(これは文法事項の習得を優先したからでもあります)。
文法の部分は概ね正しいと思いますが、
もしご指摘などございましたら、お寄せ下さい。

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by bulbulesahar | 2014-08-22 07:55 | ウチナーグチ(沖縄語)

使えるうちなあぐち会話:第0回   

前に投稿した「うちなあぐち文法提要」は、
沖縄語の文を作るための規則を余すことなく収録した上で、
それらを整理整頓して記述しようとしました。
ただ、沖縄語の文法体系の大伽藍を知らしめようとするあまりに、
ともするとその知識が頭に入ってきづらいものになっていたので、
この企画では、よく使いそうな表現を解析することで
応用力(つまり会話・作文力)の向上を目指そうと思います。

ただ、筆者は沖縄の人間ではないので、表現方法に「和臭」がどうしてもでてくると思われます。
もしよりよい表現方法がありましたらご指摘いただけたらと思います。



第0回:「ワタクシニホンゴワッカリマセーン」的な表現

例えば、沖縄で年配の方にいきなりうちなあぐちで話しかけられたときには…

「我ねえ沖縄口ぬ分かやびらん。大和口っし語てぃ呉みせえびらに?」

(読み:わんねーうちなーぐちぬわかやびらん。やまとぅぐちっしかたてぃくぃみせえびらに?)

《日本標準語訳:私は沖縄語が分かりません。標準語で話してくださいませんか?》


【解析:わんねえ+沖縄口+ぬ+分かい+あびらん。
      大和口+っし+語てぃ+くぃい+みせえ+びらん+い?
       ⇒私は+沖縄語+が+分かり+ません。
         標準語+で+話して+くれ+(尊敬)+ません+か?】

  以上のように沖縄語文→読み→標準語訳→解析のバターンで進めることにします。
 (以後は上の4つをカッコの違いだけで区別することにします)
  文法的解析は、基本的に上記のように標準語との対照関係を示す方式にして、
  適宜注意点を挙げることにしようと思います。
  文法用語で厳密に説明しても煩瑣かつ分かりにくくなるだけのような気がするので。

・上の文の注意点
 ①「わん」が「私」で「わんねえ」が「私は」ですが、「ねえ」は「…は」ではありません。
   「わん」の後にだけ来る不規則な形。
 ②「沖縄口ぬ」の「ぬ」は標準語の「…が」に対応しますが、
   「…が」を沖縄語で表現するときは、大体
   「が(人称代名詞や人名、それから準体名詞)」と「ぬ(それ以外)」を使いわけるようです。
 ③尊敬表現の「…みせえん」は標準語よりも使用範囲・頻度が高い
  (京言葉の「…はる」ほどではないにしても)ようです。
  「沖縄方言ニュース」でも地の文で結構使っていますので…。
 ④「…か?」は今回「い」を使いましたが、
   これは標準語で「終止形」を使うような場合には使えません。
   つまり「…するのか?」というような場合には別の表現を使います。
   「い」が使えるのは「…しないのか?」「…しようか?」「元気か?(名詞の後)」、
   あと係り結びの連体形の後などです。


今回の表現は、もっぱらこの企画の方針説明のために半ば冗談で作っています。
だいたい沖縄語でこんな返答をしても
「うちなあぐちができるんだね!」って思われるだけでしょうし(笑)
次回からはもう少し簡単で、かつ応用範囲の広そうなものを題材にしようと思います。
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by bulbulesahar | 2011-08-07 02:16 | ウチナーグチ(沖縄語)

うちなあぐち文法提要第三章B.形容詞編   

B. 形容詞編

・沖縄語の形容詞の終止形は-san の形になります。
 そしてこれは元来-sa+an でした。
 (takasan「高い」を例にするとtakasa+an, つまり「高さ+ある」という構成です)
 よってその活用も基本的には存在動詞「あん」と共通となり、
 基本語幹 ●-sar- , 連用語幹 ●-sa- (丁寧形は②で接続), 音便語幹 ●-sat- です。
 但し、単純形グループの接辞は、-u- を介さずに直接-sa-の後に接続します。

※その他の特徴

・未然形、禁止形、命令形は存在しない。
 (基本語幹を使うのは確定条件形と義務形、仮定条件形ぐらいか?)

・副詞形が存在し、否定形はそれと「ねえん」を組み合わせて表現する。
 副詞形の作り方:①基本語幹から-sar-を取り除いて●- の形にする。
            ②そこに-ku または-shiku を後続させる。
            (どちらを用いるかは古典日本語のク活用とシク活用に大体対応する)

 否定形は、●-ku/-shiku+(助詞ya)+neen=●-ku/-shiku-neen または
                          ●-koo/-shikoo-neenとなる。

・また、否定形は●-sa(a)-neen でもよい。

・特別な接続形●-sanu が存在し、「~なので、(~が)~くて」を意味する。

・時制は過去(直接・間接の区別なし)と回想のみ。

・心情を表す形容詞の「思う・感じる主体」が一人称以外の場合は、
  ●-saa-sun「~そうにする」(サ変「すん」変化)を用いる。

  (共通語で「あなたが恐ろしい」が「私はあなたを恐ろしく思う」
    という意味になるのと同じことが沖縄語でも起こるため)




(C. 形容動詞編)

・沖縄語には形容動詞というカテゴリーは存在しません。
 元来は本土方言の形容動詞に対応する形は殆どなかったようですが、
 共通語の形容動詞を借用する場合は、「名詞+やん」として処理するようです。
 ただ、「形容動詞の活用」といえそうなものもおぼろげながら存在するので、
 一応載せておきます。

・否定形:○-(や)あらん
・副詞形:○-に (「に」は格助詞からの転用と解釈できる)
・終止形:○-やん
・連体形:○-な (従来用いられてきた「やな(嫌な)」などの連体辞「な」を利用する)
 ※その他の諸形は「やん」の活用から導出する。




以上で用言はおしまいです。


また加筆するかもしれませんが、「うちなあぐち提要」はここでひとまず終わりです。
理論的には、この提要で示した知識の体系さえあれば、沖縄語を解読し、
また共通語文を沖縄語文へと(表現の自然さは措くとしても)移しかえることが可能となるはず。

「手軽に見られるおさらいメモ」のつもりが、意外と壮大な体系(笑)になってしまい、
ビギナーには敷居が高くなってしまったでしょうか。
まあ八割方以上、沖縄語の文法を体系的に記述したいという自己満足の産物ですが、
もし、沖縄語を勉強している方がこのまとめを目にするということがあるのなら、
一度勉強した文法の知識の整理にでもお役に立てばと思います。



あんしえやあー。
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by bulbulesahar | 2011-06-21 07:23 | ウチナーグチ(沖縄語)

うちなあぐち文法提要第三章A.動詞編第三節「不規則動詞」   

第三節 ―不規則動詞の変化―

①繋辞「やん(~である)」と存在動詞 「あん(有る)」

・基本語幹はyar- , ar- , 連用語幹はya- ,a- (丁寧形は②が後続), 音便語幹はyat- , at- 。
 ただし、単純形グループ接辞に関してはxxx'-u-に接続するのではなく、
 連用語幹に直接接続する(終止形yan, an, 連体形yaru, aru, など)

・可能な時間表現は「過去(直接・間接の区別なし)」と「回想」のみ。
  (過去終止形yatan, atan, 回想終止形yateen, ateen)

・「やん」は固有の否定形を持たず、「あん」から「あらん」を借りている。
  同様に「やん」の丁寧形「やいびいん」の否定形は「あいびらん」。
  一方、「あん」の否定形は「ねえん(無い)」となっている。


②「ねえん(無い)」

・「neen」の形が連用・単純・終止・連体形となる。
 (連用形は「neen nayun/in(無くなる)」「neen nasun(無くす)」位にしか使わない)
  但し副詞anshi , 係助詞duによる係結びの連用形はneenru 。
 (同様にga の係結びの推測形はneenra??)
  またこの形に否定形グループ接辞が接続するだろうから、仮定条件形はneendeeと思われる。

・否定形はneeran。二重否定でなく強調のニュアンス。疑問助詞i はこの形につく。

・丁寧形はnee-yabiran。これも二重否定ではない。

・音便語幹はneent- 、但し時制は過去neenta- と回想neentee- しかないだろう。


③「をぅん(居る)」

・基本語幹wur- , 連用語幹wu( i )- (丁寧形はwui-yabiin/ibiinか?), 音便語幹はwut- 。
 ただし、単純形グループの 接辞は、wu- の後に接続する。


④「-oon変化(まんどおん「沢山ある」、ぐとおん「~のようだ」など)」

・③変化と基本的に同一。基本語幹-oor- ,連用語幹-oo( i )- , 音便語幹-oot- 。
 ただし、単純形グループの接辞は、oo-の後に接続する。


⑤音便語幹だけが特殊な変格活用

・サ変:「すん(する)」全ての語幹がs- , ただし音便接続形は-ssi , -ssaani ,など。
    (否定形と直接過去形の字面が同じになってしまうので、後者を古風な「しゃん」と
     表記することを「実践うちなあぐち教本」では提唱している)

・カ変①:「いちゅん(行く)」基本語幹ik- , 連用語幹ic- , に対して音便語幹?nj- となる。
      ?nj- は古典語の「往ぬ」に由来する言葉の音便語幹から借りている。

・ダ変:「んじゅん(見る)」基本語幹nd- ,連用語幹nj- , 音便語幹nc- となる。

・マ変:「しむん(済む、~でよい)」の音便語幹はshimut- となる場合がある。
 (「実践うちなあぐち教本」による。「沖縄語辞典」によるとshid-で規則的)



⑥カ変「ちゅうん(来る)」

・基本語幹kur- , 連用語幹c- , 音便語幹c-  となる。
 但し否定形はkuun が、命令形はkuuwaが一般的か。
 また、単純形グループの後に続く接辞はcuu- の後に接続する。


⑦「-seen変化」(~みせえん「~なさる」、めんせえん「いらっしゃる」など)

・基本語幹soor- , 連用語幹see- (丁寧形は②が接続), 音便語幹sooc- , となる。


⑧「~ゆすん(~できる)」(「実践うちなあぐち教本による」)
・基本語幹yus- , 連用語幹yus- , 音便語幹yusut- , 但し確定条件形yusuri-ba
 (この語は「~おほす(果す)」から来ており、サ行規則活用が可能とも思われる)

以上で動詞変化はおしまいです。
用言はあと形容詞のみで、これはかなり楽だと思います。
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by bulbulesahar | 2011-06-21 06:13 | ウチナーグチ(沖縄語)

うちなあぐち文法提要第三章A.動詞編第二節「活用形」   

第二節 ―活用形の展開―

活用形の展開を語幹ごとに図示する。

以下では基本語幹をxxx- , 連用語幹をxxx'- , 音便語幹をxxx*- ,で表し、
各活用形もこれに準じる。


①基本語幹xxx- から展開する活用形・派生形


未然形xxx-a →志向形xxx-a (終助詞na「勧誘」、接続助詞yaka(比較)が後続可)
        未然仮定形①xxx-a-ba(文語的、定型表現のみに使用か?)
        譲歩条件形xxx-a-wan 「(たとえ)~であろうが」(未然仮定形①の派生)
        未然仮定形②xxx-aa 「いやしくも~ならば、(必ず~)」の意。頻出せず
        受動・可能形xxx-a-riyun/in(ラ行活用)「~される、~できる」
         (↑可能形は動作対象が主語になることが多く、状況可能の意味が強い)
        使役形①xxx-a-sun(主動詞がサ行活用以外の場合・この活用形自体はサ行活用)
        使役形②xxx-a-shimiyun/in(主動詞がサ行活用の場合・ラ行活用)
        嫌厭形xxx-a-npaasun「~したがらない」(サ変「すん」活用)
        否定形xxx-an(この形で連用・単純・終止・連体形として使用、疑問助詞i 後続)
        否定派生形:否定過去形xxx-an-ta-(直接過去・間接過去の区別なし)
                  (↑これに単純形グループ接辞(後述)が後続する)
                否定回想形xxx-an-tee-(単純形グループ接辞が後続)
                否定接続形xxx-an-ti「~しないで」(係助詞-ya, -n 後続可)
                否定普遍条件形xxx-an-/ainee (/ はn とa の非連音を示す)
                      (↑「~しないと、~(になる)」の意)
                否定仮定条件形xxx-an-dee (「~しないなら、~」の意)
                否定付帯状況接辞xxx-an-a, xxx-an-/yooi, xxx-an-/ai など
                       (↑「~せずに、しないままに」の意)
                否定連用係り結び形xxx-an-ru(「どぅ」の結びに使用)
 
          ※以上のような否定形と否定派生形の、xxx-an- の後に接続可能な
            接辞全ての集合を「否定形グループ接辞」と称することにする。

禁止形xxx-u-na(禁止命令に用いる。古典文法の終止形だが、沖縄語ではこの用法しかない)

已然・命令形xxx-i →確定条件形xxx-i-ba(「~すると、~」、文語的)
             義務形xxx-i-waduyaru(古典日本語の「~なればこそである」に対応)
              (↑-saなどの終助詞が後続するとyaruが単純形になりya-saとなる)
             命令形①xxx-i (いささか、古風ですました語感)
             已然・命令形の派生形:仮定条件形①xxx-ee(「~ならば、~」の意)
                            命令形②xxx-ee (こちらをよく用いる)

  ※本提要ではxxx-ee形をxxx-iの派生形(-i+ya=ee?)として設定しています。
   これは、沖縄語の基本語幹を基軸とした「四段変化」をa, 'i, u, i として
   古典日本語の四段変化と対応させたほうが、
   歴史的にはより正しい説明と思われ、体系としても美しいと感じられるためです。  


②連用語幹xxx'-から派生する活用形・派生形


連用形xxx'-i(i)(用言と接続し、複合用言を形成する。また助詞gaが後続して目的を表示)
      ※以下が連用派生形(重要な複合用言も掲出する)
        能力形xxx'-i-yuusun(不規則変化)「(動作主が)~できる」
        尊敬形xxx'-i-miseen(不規則変化)尊敬語より多少丁寧語に近いニュアンス。
        様態形①xxx'-i-gisan(形容詞変化)「~のようだ、~しそうだ」
        様態形②xxx'-i-gisaasun(サ変「すん」変化)「~そうにする」
        希求形xxx'-i-busan(形容詞変化)「~したい」
        容易形xxx'-i-yassan(形容詞変化)「~しやすい」
        困難形①xxx'-i-gurisan(形容詞変化)「~しにくい」
        困難形②xxx'-i-kantisun(サ変「すん」変化」「~しかねる、~しづらい」
        普遍条件形xxx'-i-inee「~すると、~(になる)」
        付帯状況接辞xxx'-i-gashii, xxx'-i-ganaa, xxx'-i-naganaなど
               (↑「~しつつ、~しながら」の意)

丁寧形①xxx'-abiin(本動詞がラ行変化以外の場合、活用形自体はラ行変化)
丁寧形②xxx'-yabiin/-ibiin(本動詞がラ行変化の場合、活用形自体もラ行変化)

単純形xxx'-u(疑問助詞mi, ga, naa, 接続助詞kutu, shiga, 推量助詞sani, gayaaなどの助詞、
         および準体名詞shi「~こと、~の(助詞-ya, -n, -gaが後続可)」が後続。)
        ・ラ行動詞ではxxx'-i- となることが多い(以下の派生形でも同様)。
        ※単純派生形:間接過去形xxx'-u-ta-(単純形グループ接辞が後続)
                 (↑丁寧形は後続しない。丁寧形自体を間接過去形にする)
                 (↑主に3人称に使用。古典日本語の「けり」のニュアンス?)
                 回想形xxx'-u-tee-(単純形グループ接辞が後続)
                   (↑「~だったものだなあ」というニュアンスらしい)

 (以下の終止形・連体形・推測形は、上記の単純形の派生形とみなすことができる。)

終止形xxx'-u-n(言い切りの形。doo, yaa等の終助詞、接続助詞nee(shi)などが接続)
          ・ラ行動詞ではxxx'-i-n- となることが多い(以下の派生形でも同様)。
          ※終止派生形:比況形①xxx'-u-n-/neesun(サ行変格(すん)変化)
                 意向形xxx'-u-n-chiyan「~するつもりだ」(「やん」変化)

連体形xxx'-u-ru(体言に接続。副詞anshi, 助詞du の結びに使用、その際疑問助詞 i が後続可。
           また、baa(疑問・自問), munu(理由・逆接理由・強調)等の助詞も後続)
          ・ラ行動詞ではxxx'-i-ru- となることが多い(以下の派生形でも同様)。
          ※連用派生形:比況形②xxx'-u-ru-gutoon (-oon変化(不規則))

推測形xxx'-u-ra(常に係助詞gaの結びとして現れる。「~だろうか」。
          疑問の意を含んだ名詞従属節にも用いられる「~なのか(知っている)」)
          ・ラ行動詞ではxxx'-i-ra となることが多い。
          ※推測派生形:仮定条件形②xxx'-u-raa/ree「~なら、~」
             ・ラ行動詞ではxxx'-i-reeが専ら使われる。

    ※以上のような単純形・終止形・連体形・推測系における、xxx'-u- の後に
      接続可能な接辞全ての集合を「単純形グループ接辞」と称することにする。



③音便語幹から派生する活用形・派生形

音便接続形①xxx*-i 「~して」(帰結文のほか、係助詞-ya, -n が後続可能)
                (また、特定の動詞と結びついて定型的な表現を作る)
                 ex. xxx*-i + njun 「~してみる」
                  ?ichun 「~していく」
                  cuun「~してくる」
                  kwiyun/in, turasun「~してくれる」
                  ?utabimiseen「~していただく」
                  neen「~してしまった」(既遂形)
                                 
音便接続形②xxx*-aani, -aai「~して、~することによって」(理由・根拠のニュアンス)

並列形xxx*-ai xxx*-ai (sshi)「~したり、~したり( して )」

直接過去形xxx*-a-「~した」(単純形グループ接辞が後続、丁寧形は後続せず)
                 話者の直接経験の範囲内と想定される事態に使用される。
                 古典日本語の助動詞「き」に近いか?

直接過去疑問形xxx*-ii (xxx*-a-miよりこちらが一般的か?)

現在完了形xxx*-ee-「~してある、もう~している」(単純形グループ接辞+丁寧形②が後続)
              (意味上、進行形と明確に使い分けるので要注意)
  (派生)→過去完了形xxx*-eeta- (単純形グループ接辞が後続、直接・間接の区別なし)
        完了回想形xxx*-eetee-(単純形グループ接辞が後続)
        現在完了否定形xxx*-eeneen(否定形グループ接辞+丁寧形②が後続))
        過去完了否定形xxx*-eeneenta-(単純形グループ接辞が後続)
        完了回想否定形xxx*-eeneentee-(単純形グループ接辞が後続)

現在進行形xxx*-oo-「(いま)~している、~しかかっている」(-oon変化(不規則))
  (過去進行形、進行回想形etc. は-oon変化から規則的に導出できるが一応掲出する)
  (派生)→過去進行形xxx*-oota- (単純形グループ接辞が後続、直接・間接の区別なし)
       進行回想形xxx*-ootee- (単純形グループ接辞が後続)
       現在進行否定形xxx*-ooran (否定形グループ接辞が後続)
       過去進行否定形xxx*-ooranta-(単純形グループ接辞が後続)
       進行回想否定形xxx*-oorantee- (単純形グループ接辞が後続)
     (以上各形の丁寧形はxxx*-oo-ibiinから導出、
      過去進行形はxxx*-oo-ibiitan、やはり直接・間接の区別なし)

予備形xxx*-oocun 「~しておく」(カ行変化)


以上で沖縄語の動詞の体系をほぼ完全に記述することができました。
次は、不規則動詞を扱います。



         
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by bulbulesahar | 2011-06-21 01:10 | ウチナーグチ(沖縄語)

うちなあぐち文法提要第三章A.動詞編第一節「概要+語幹」   

第三章 ―用言―

A.【動詞編】

第一節 -動詞活用の概要-
 ※沖縄語の動詞活用の複雑さは学習の一番の山であり、ここで挫折する人も多そうです。
  本提要では、丸暗記をできるだけ減らすために、その複雑さの中の原理をできるだけ
  明らかにしようと試みます。
  活用表を一望のもとに見たいというひとは、「うちなあぐち世」のウェブサイトの
  「うちなあぐち賛歌」のコーナーに掲載されていたと思いますので、
  それを見ていただければよいのではないかと思います。

(a)動詞活用の比較

・日本共通語の動詞活用:五段活用・上下一段活用・不規則活用(カ変・サ変)の区別が重要。
            反面活用行(カ行・サ行etc.)は活用形に本質的な差異をもたらさない。
            ex. 未然・連用…の順に列挙
            五段 a i u u e e
           上一段 i i iru iru ire iro
           下一段 e e eru eru ere ero
           
           語幹末の子音に以上の母音を後続させるだけで何も問題は生じない。
           連用形の音便は多少複雑だが、なお後続接辞とは明確に区別できる。

・沖縄語の動詞活用:少数の不規則活用も含めほぼ全ての動詞が四段活用に収斂している。
          一方で、連用形において口蓋化などによって語幹末子音が変化している。
          そのために「何行活用」かによって連用形が多少変則的に活用する。
          動詞活用の行が何行なのかは、基本語幹末の子音によって決まる。
          基本語幹は、未然形(否定形・志向形などに使われる形)から、
          活用語尾aを除いて作ることができる。

          ※例えばkacun「かちゅん(書く、終止形)」の場合には、
          否定形はkakan「かかん」であり未然形はkaka,
          従って基本語幹はkak- ということになる。従ってカ行活用。
          
          
          さて、沖縄語の「基本語幹」を基軸とした四段活用は以下の通り。

          「未然」、「連用」、「禁止」、「已然・命令形」の順に
            a,  'i,  u,  i
          ('iの ' は先行子音の音変化を示し k,t→c, g,d→j, r→ゼロ, に子音を変える)

          そして、終止形・連体形などの活用形は「連用形の語幹」から派生する。

          ※再びkacunを例とすると、連用語幹はk→cの法則からkac-,
          よって連用形はkaci, そしてそこから派生する終止形はkacunとなる。
          

          また連用形の音便化も共通語よりも進展し、後続接辞と融合しているので、
          これを別個に「音便語幹」として扱う必要が出てくる。
          
          ※共通語では過去形は、連用形+た=「書きた」にイ音便を適用して
          「書いた」が導出されるが、対応する形である沖縄語の直接過去形は、
          kacan「かちゃん」となり、連用形末尾と直接過去接辞の語頭が完全に融合。
          従って音便語幹kac-を設定しなければならない。           

          また、共通語では後続する接辞の違いとして活用形扱いされないものが、
          沖縄語では、「融合」のために変化形として挙げざるをえなくなっている。

          ともかく、沖縄語の動詞活用においては、
          
         ・「基本語幹」「連用語幹」「音便語幹」の三段構えで考えること
         ・活用が「何行活用」なのかを常に意識すること
           (辞書に載る形の「終止形」は「基本語幹」ではないので要注意!)

          以上の2点が肝要です。

(b) 共通語の動詞との対応関係、そして沖縄語には何行活用があるのか。

さて、次は「基本語幹」から「連用語幹」「音便語幹」をどう導き出すかを問題にしたいのですが、
その前に少々クリアすべき問題があるので、お付き合いください。

学習するときに動詞を覚える場合、「終止形」の形で記憶していくことになると思います。
(辞書に載っている形という意味でも、印象に残りやすいでしょうし)
しかしこの終止形、基本語幹ではなく、連用語幹から派生しているので、
それだけでは活用の行が判明しません。
勿論辞書などでいちいち未然形を確認すればよいのですが、
明らかに共通語と同源の言葉まで確認するのは多少面倒なので、
共通語と沖縄語の動詞の活用面での対応関係を少し見ておきましょうという話です。
それは沖縄語の動詞にはどの行の活用が存在するのかという話とも関わってきます。

①沖縄語の動詞の活用の行
 ・以下が存在する。(上述のとおり四段活用しか存在しない)

  「カ行」「サ行」「タ行」「ナ行」「マ行」「イャ行」「ラ行」「ガ行」「ダ行」「バ行」

   ※但し「ナ行」は「しぬん(死ぬ)」、「イャ行は「いゅん/いいん(言う)」のみ。
    (「いゅん」はラ行も可。その場合も連用語幹・音便語幹は以下に紹介のとおり)

   各行に関して「未然」「連用」「禁止」「已然・命令」= a, 'i, u, i と規則的に活用する。
    (連用語幹形成に関しては基本語幹末子音のk,t→c, g,d→j, r→ゼロ, の法則に留意)

②共通語との対応関係
 ・共通語の上下一段活用→ラ行活用へ
   ex.「起きる」→「うきゆん/いん(基本語幹?ukir- )」否定形「うきらん」
     「考える」→「かんげえゆん/いん(基本語幹kangeer- )」否定形「かんげえらん」

 ・共通語のワ行五段活用→ラ行活用へ
   ex. 「歌う」→「うたゆん/いん(基本語幹?utar-) 」否定形「うたらん」

・共通語で「むる」「ぶる」で終わるラ行五段活用の一部→ダ行活用へ
   ex. 「眠る」→「にんじゅん(基本語幹nind- )」否定形「にんだん」
      「被る」→「かんじゅん(基本語幹kand- )」否定形「かんだん」

 ・上述以外の五段活用は、沖縄語でも原則として同じ行の活用になります。


(c) 基本語幹からの、連用語幹・音便語幹の導出のしかた(規則動詞の場合)

①連用語幹の導出:何度も述べたとおり、k,t→c, g,d→j, r→ゼロ,の法則を適用すればOKです。
 
ex. カ行「あっちゅん(歩く・働きに出る)」基本語幹akk- → 連用語幹acc- ,連用形「あっち」
   タ行「まちゅん(待つ)」基本語幹mat- →連用語幹mac- ,連用形「まち」
   ガ行「うぃいじゅん(泳ぐ)」基本語幹?wiig- →連用語幹?wiij- ,連用形「うぃいじ」
   ダ行「やんじゅん(破る)」基本語幹yand- →連用語幹yanj- ,連用形「やんじ」
   ラ行「こおゆん/いん(買う)」基本語幹koor- →連用語幹kooi- , 連用形「こおい」

 それ以外の行では基本語幹=連用語幹になります。
 
 ex. サ行「まあすん(亡くなる・回す)」基本・連用語幹maas- ,連用形「まあし」
     (連用形maashiですが、已然・命令形も同形なので連用語幹による口蓋化ではない)
   マ行「ゆむん(読む)」基本・連用語幹yum- ,連用形「ゆみ」
   バ行「とぅぶん(飛ぶ)」基本・連用語幹tub- , 連用形「とぅび」


②音便語幹の導出:沖縄語の歴史的発展から見れば必ずしも正しい説明では
 ないかもしれませんが、「覚えるコツ」を出来る限り示そうと思います。
 例示する動詞は基本的に上の連用語幹の説明に用いたものにします。

・カ行・サ行:k, s→c  
 ex. 「歩っちゅん」基本語幹akk- →音便語幹acc- ,直接過去形「あっちゃん」(以下同様)
   「亡あすん」maas- →maac- ,「まあちゃん」

 kaki-ta →kaita とイ音便した後にi が後続子音を口蓋化させた後に消滅したか。
 サ行は共通語では音便しないが 鹿児島方言ではイ音便を起こすので、
 同様にmawashi-ta→maaita→maac- という経過をたどったように思える。
  (※考え直してみると、i 母音脱落の後に子音が同化したとみたほうがよいかもしれない。追記)


・ガ行:g → j  
ex. 「泳いじゅん」?wiig- →?wiij- ,「うぃいじゃん」

 カ行のケースの濁音バージョン。


・タ行:t → cc   
 ex. 「待ちゅん」mat- →macc ,「まっちゃん」

 maci-ta からi が脱落、子音同化によって促音化したようだ(macta→macc- )。


・ナ行:n → j    
ex. 「死ぬん」shin- → shij- 「しじゃん」

 shini-ta→shinda(撥音便)からn の脱落(前鼻音化の逆の過程?)、
 その後隣接したi の影響で口蓋化d→jか?一語だけなので覚えて下さい。

・マ行・バ行:m, b → d   
ex. 「読むん」yum- → yud-「ゆだん」
    「飛ぶん」tub- → tud-「とぅだん」

 撥音便からのn 脱落 (yumi-ta, tubi-ta → yunda, tunda → yud-, tud- )

・イャ行:y → c  
ex. 「言ゅん」?y(i)- → ?ic- 「いちゃん」

 ihita→iuta(ウ音便)→ita(ウの脱落orイと同化、その後口蓋化?)
 一語だけなので覚えてください。

・ラ行:r → t, c, cc   
ex. (I)「買おゆん/いん」koor- → koot- 「こおたん」
  (IA)「入りゆん/いん」irir- → itt- 「いったん(入れた)」
  (II)「着ゆん/いん」cir- → cic-「ちちゃん」
  (III)「切ゆん/いん」cir- → cicc- 「ちっちゃん」

  (I)が大部分を占める。古典日本語のハ行四段(共通語ではワ行五段)由来の全て?、
  ラ行四段由来の動詞の殆ど、および上下二段動詞由来の動詞の全て?
  (口蓋化しないのは四段動詞からの類推?)が該当。
     toru:tori-ta → totta → tut- , kahu:kahi-ta → kauta → koot-

  (IA)「…りゆん/いん」型の動詞の多くはこの形 ( irit- → irt- → itt- )
    受動・可能助動詞「(未然形)-りゆん/いん」のこのパターン。
     ※未然形で基本語幹から-ir-が脱落することが多いことに要注意。
      ex.kaka-riyun/in(書かれる)→(kaka-riran) →kakaran(書かれない)

  (II)の例は少ない。古典日本語の上一段動詞の一部が該当か?(「煮る」「似る」「居る」)

  (III)は古典日本語ラ行四段動詞のうち終止形-iru, -suru, -tsuruのもの+「射る」「干る」?


・ダ行:d → t   
ex. 「破じゅん」yand- →yant- 「やんたん」

 終止形yamburu(元来前鼻音化していた?)→ yandu(bu脱落、r→d)
 過去形yandi-ta → yantta → yant-


以上なかなか大変でしたが、これで音便語幹の導出が終わりました。
次からは、いよいよ語幹から活用形を展開していきます。
  
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by bulbulesahar | 2011-06-19 23:56 | ウチナーグチ(沖縄語)

うちなあぐち文法提要 第二章 ―助詞―   

第二章 ―助詞―

第一節 ―格助詞― (共通語→沖縄語)

①「が」→「が、ぬ」 
 ※使い分けの原則:「が」→人称代名詞「わん(我)」「いゃあ(汝)」など
                  人名
                  準体名詞「し」(=「甘いの(甘いやつ)」というときの「の」)
             「ぬ」→それ以外(人間を指す単語でも)

②「の」→「(ゼロ)、が、ぬ」
 ※使い分けの原則:(ゼロ)→「わん」「いゃあ」「わったあ(我ら)」「いったあ(汝ら)」
               ex. 「いゃああんまあ(お前のお母さん)」
             「が」→「うんじゅ(あなた)」「うり、あり(彼/彼女)」
             「ぬ」→それ以外


③「を」→「(ゼロ)」,※文語・込み入った文章では「ゆ」を用いる。

④「から」→「から」,※沖縄語では「動詞+から」で理由を表す用法はない。
          一方で「~を通る」という場合の「~を」のような経由地を示す用法がある。

⑤「と」→「とぅ」:並列、あるいは「(誰々)と遊ぶ」というような場合の随伴の「と」。
     「んでぃ」:「~と言う」などの引用。「ん」の音に後続するときは「でぃ」になる。
     
  ex. 「行かんでぃ言んikandi?iin」は「行こうと言う」「行かないと言う」の二様の解釈が可能
        「行かika」が「行こう」、「行かんikan」が「行かない」を意味するため。

      ※ただ、引用的な意味合いでも定型的表現「~とぅむてぃ(~と思って:文語)」
       「~とぅっし(~として:共通語の影響下に成立?)」では「とぅ」を用いる。

⑥「で」→「っし/さあに」:手段
     「なかい」:抽象的な手段「~において」にニュアンスが近い?
     「をぅてぃ/をぅとおてぃ/んぅじ」:動作が行われる場所
     「やてぃ」(←厳密には動詞の活用形):「Lサイズで大丈夫」というときの「で」。
     (ゼロ):「~ではない」「~である」の「で」には何もつけない。
           (通常係助詞「や」「どぅ」が入る)

⑦「へ」→「かい」:動作の方向

⑧「に」→「に」:時間に関する名詞+少数の名詞「あたい(程度、くらい)など」のみに使用
     「んかい」:動作の及ぶ対象を示す。「与格」。受動表現の行為者。
           「わん(我)」に後続するときは「わんにんかい」という特別な形を使う
     「なかい」:「~の中に/で」
     「が」:動詞連用形に後続して目的を示す。「~しに行く」のときの「に」
     (ゼロ):「~になる」というときの「に」のときは何もつけなくてもよい。
          最近では共通語の影響か、「んかい」もみられる。

⑨「より」→「やか」:比較の対象

⑩「なありい」→「~のあたりに/で」:場所・時間について使う


第二節 ―係助詞―

※係助詞は名詞の後だけではなく、格助詞や動詞の音便接続形の後にも付くことができます。

①「や」:共通語の「は」。「や」の形で現れるのは長母音のときのみ、それ以外は以下の通り。
     「あ」の後:「あ」に融合 shima+ya=shimaa「しまあ」
     「い」の後:「え」に融合 ?umi+ya=?umee「うみえ(発音は「うめえ」)」
     「う」の後:「お」に融合 basu+ya=basoo「ばすお(発音は「ばそお」)」
     「ん」の後:「のお」に融合mun+ya=munoo「むのお」※但し「や」のままも可能
     「わん(我)」の後:wannee「わんねえ」という特別な形を使う。

②「ん」:共通語の「も」。「ん」に後続する場合は?in+n=?inun 「いん(犬)→いぬん」に。
     「わん(我)」の後ではwannin「わんにん」となる。

③「どぅ」:強調する文節の後に来る(用言連用形に付いて「すん(する)」等が続くことも可)
      係結びがあり、終止形→連体形(後に終助詞がある場合は結びが流れる)

④「が」:疑問の焦点になる文節の後に来る(やはり用言連用形につくことができる)
      推量表現に使用。終止形→推量形(終助詞がつくことは稀、ついても流れない)


第三節 ―接続助詞-(代表的なものだけ、共通語訳には先行する動詞も訳しこまれています)

①「くとぅ」:「~なので」。「~すると」のニュアンスのときも。単純形に後続
②「しが」:「~だけど」。単純形に後続
③「とおてぃ」:「~なのだから、なのに」既知性・前提性が強い。単純形に後続
④「てぃから」:「~だったら」「~なのだから」。単純形に後続
⑤「でぃち」:「~するように」。「~と言って」からの発展。終止形に後続
⑥「ねえし」:「~するように」。終止形に後続
⑦「ぐとぅ」:「~するように」。連体形に後続
⑧「むぬ」:「~なのだもの(~なのだから、なのに)」連体形に後続
⑨「いねえ」:「~すると、~するなら」。確定度の高い条件。連用形に後続
⑩「がしい/がなあ」:「~しながら」。連用形に後続
⑪「よおい」:「~せずに」。未然形に後続
⑫「やか」:「~するよりも」。未然形に後続
⑬「んでえ」:「~しないと、~しなかったら」否定の条件。未然形に後続
⑭「ば」:「~なれば、~すると」。確定条件(文語)。已然・命令形に後続
⑮「ば」:「~ならば」。仮定条件(文語・稀)未然形に後続
⑯「はん」:「~しても、~しようが」。⑮の「ば」+「ん」。未然形に後続

           
第四節 ―終助詞―(以下の複数を同時に組み合わせて用いる場合もある)

①"-i":疑問終助詞、可否疑問文のとき。名詞に後続可。
    係り結びのさいの連体形の後にはそのまま接続"-ru+-i=rui"
    否定形に後続すると"-an+i=-ani"。
    ※「ねえん(無い)」は強調否定形(未然形から作る)に接続し"neeran+-i=neerani"。
    終止形に後続する場合は"-n+-i=-mi"。
    音便接続形に後続して直接過去形の疑問形"-ii"を作る。
②"-ga":疑問終助詞、疑問詞疑問文のとき。疑問詞または用言単純形に後続。
③"-naa":疑問終助詞、確認をこめた軽い疑問の気持ち。用言終止形/連体形に後続。
④”-baa":「~なわけ(?)」、理由を問う・自問するニュアンスになる。用言終止形に後続。
⑤"-sani":「~だろう(?)」、疑問にもつかえる。用言単純形に後続。
⑥"-gayaa":「~かなあ」、自問・推量。用言単純形に後続。
⑦"-tee":「~だろう、したら(どうか?)」推量。用言終止形に後続。
⑧"-mun":「~だもの、だから」理由陳述のニュアンスのある強調。用言連体形に後続。
⑨"-di":「~だそうだ、~だと」伝聞。格助詞からの派生、用言終止形などに後続。
⑩"-haji":「~かもしれない、~だろう」推測。名詞「筈」からの派生、用言連体形に後続。
⑪"-huuji":「~みたい、のようだ」様態。名詞「風儀」からの派生、用言連体形に後続。
⑫"-bicii":「~べき」。この後に繋辞(be動詞)"yan"が後続することも。用言連体形に後続。
⑬"-doo":「~ぞ」と「~よ」の中間ぐらいの語気? 用言終止形に後続。
⑭"-sa, (-ssa)":「~さ」。ウチナーヤマトグチに残存。用言単純形に後続。
⑮"-yaa":「~ね」ぐらいの柔らかい語気。用言終止形に後続。
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by bulbulesahar | 2011-06-19 05:08 | ウチナーグチ(沖縄語)

うちなあぐち文法提要 第一章 ―音韻-   

沖縄語解読ツール!というつもりで始めた企画。
(まあ沖縄語の文章ってあまりないけどね、それから本提要で扱うのは、
 日本語族琉球語群沖縄語中南部方言のうちの首里・那覇方言ということになります。
 ネイティヴではないこともあり、どうしても学習しやすい、共通語に押されているとはいえ、
 沖縄県内の「方言」ではまだいくらか覇権を握っている言葉に選ばざるをえないですね…
 もっと切羽詰まった状態にある言葉もどうにかしないといけないのだろうけれど、
 一体21世紀になって例えば本式の与那国語を話せる人はまだ存在しているのだろうか)

本格的に学習するなら、書籍や「うちなあぐち世」というとても立派なサイトもありますが、
(それから音声資料は、まずは沖縄方言ニュース(ネットで聴ける)がある)
「基本的な文法を簡単に習得・おさらいできるメモ」ということで。
本土方言を母語とする人が、沖縄語で会話・作文するときに参考になるように、
日本共通語との比較対照に重点を置いています。
(語彙は、「首里・那覇方言音声データベース」や市販の辞書を参照してね)

※参考文献(というか勉強に用いた本)
・西岡敏・仲原穣『沖縄語の入門』白水社
・吉屋松金『実践うちなあぐち教本』南謡出版
・内間直仁・野原三義編『沖縄語辞典 那覇方言を中心に』研究社
・亀井孝ほか編『言語学大辞典セレクション 日本列島の言語』三省堂
 所収の「琉球列島の言語」

  ※本提要については、ソース(本ブログ)を明らかにしないままに
    転載・リンクしないようお願いいたします。
 
  


第一章 -音韻―

第一節 -特徴的な音韻対応-

共通語→沖縄語の順 

① e→i, o→u (これは有名、te, to, de, do→ti, tu, di, duに注意!)
② ai, ae →ee(母音重ねは長母音を表すことにします), au, ao→oo
③ oo(音読みの「おう」)→uu(歴史的仮名遣いでeu,ou), oo(同じくau)
④ awa→aa
⑤ ki→ci「ち」,ri→i
  (①④⑤を適用すると「沖縄」okinawa→uchinaa, ②③⑤で「兄弟」kyoodai→coodee)
  (また「余り」amari →amai,「踊り」(w)odor i→wudui,「帰り道」kaerimici →keeimici)
⑥ su →shi「し」, zu →ji「じ」, tsu →ci, はよくある。
   (「墨」sumi →simi, 「水」 mizu →miji,  「月」tsuki →cici)
※かつての士族の男子はsi, zi, tsi と発音していたらしいが、ほぼ失われている。
⑦ mとnは入れ替わることがある。「宮古」miyako→naaku, 「新」nii →mii



第二節 ―沖縄語では弁別を(あまり)しない音―

①d とr は常に混同されやすい、中間的な音も聞かれる。
②see, zee はshee, jee と発音されることが結構ある。


第三節 ―共通語にはない、または区別しない音韻―

①子音kと子音kw「くゎ、くぃetc.」, およびgとgwは区別する。

②促音で始まる単語が少数ある。kkwa「っくゎ(子)」ccu「っちゅ(人)」

③声門破裂音←発音方法はwikipedia参照のこと
この文法提要では声門破裂音は、発音記号としては「?」で表します。
この音は常に単語の一番初め(複合語では途中もある)に出現。
現れるパターンは以下の通り、(ひらがな表記は完全に決まってないので、一試案を載せます)

・共通語の「ア行」に対応する音節 a, i, u, e, o →?a, ?i, ?u (あ,い,う)
(長母音では ?aa, ?ii, ?uu, ?ee, ?ooが可能(ああ,いい,うう,ええ,おお)
 ※この音に関しては日本人は特に意識しなくても出来ていることが多いので気にしなくてよい。


・気をつけるべき音節、共通語では混同してしまう音節のペア

(以下の例は、対応する長音も可能、《 》で囲ってある例は稀少例)


ya「や」⇔?ya「いゃ」, yi「いぃ」⇔?i「い」, 《yu「ゆ」⇔?yu「いゅ」》

ex. yaa「家」⇔ ?yaa「汝・君」 yin「縁」⇔ ?in「犬」
    yiyun「座る」「酔う」⇔ yiiyun「得る」⇔ ?iyun「入る」「射る」⇔ ?yun「言う」

wa「わ」⇔?wa「うゎ」, wi「ゐ」⇔?wi「うぃ」, wu「をぅ」⇔?u「う」,

《we「ゑ」⇔?we「うぇ」》

ex. waa「我の」⇔ ?waa「豚」  wii「酔い」「柄」⇔ ?wii「上」
    wutu「夫」⇔ utu「音」   ?wencu「ねずみ」

n「ん」⇔?n, ?m「んぅ」 (←「っん」と書く例が多く、そのほうが発音の実感にも近いが
             それだと文章中では促音と紛らわしいため)


沖縄語では「ん」「んぅ」から始まる単語があります。
だいたい、「ん」は共通語のナ行・マ行から始まる単語、「んぅ」はア行から始まる単語です。
ex.「胸」mune→nni, 「皆」 mina→nna, 「稲」 ine→?nni, 「芋」 imo→?mmu,




長母音には音引きは用いず「ああ、いい、うう、ええ、おお」と表記します。
これは 「うちなあぐち世」の比嘉清さんの方針でもありますが、
端的には、沖縄語においては母音の長短は、
共通語よりもずっと意味の区別に重要だということがあるからです。
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by bulbulesahar | 2011-06-19 04:08 | ウチナーグチ(沖縄語)

方言と言語の境界―再び   

方言か言語か、政治的要因によらない、言語内在的な判定基準はないのかという話を前にしたけれど、ひとつの候補を提示。


判定基準:「言葉Aと言葉Bでニュース原稿を作ってみたら別のものになるか?」

ただし、条件1:「会話口調を使うなどして言語的差異を強調してはならない」
    (基準を厳しくするため、この条件を入れないと、日本共通語の中でも「お嬢様口調」は
     外国語、とかいうおかしなことになってしまう。つまり言語変種の枠に入る方言を排除)

    条件2:「文字表記や一部の語彙(特に名詞)が違うだけの場合は除外」
   (クロアチア語とセルビア語、ヒンディー語とウルドゥー語のような場合を排除するため)

実例:昨日のNHKのニュースから


・世界最大のエメラルドを公開

 重さ2キロ余りというエメラルドの結晶が、南米コロンビアで開かれている見本市で展示されています。コロンビアの宝石業者は「値段は想像もできない」と話しています。

このエメラルドは、コロンビアの首都ボゴタで開かれている国際的な鉱物の見本市で17日から展示されているもので、重さが2キロ余りあります。ボゴタから70キロ余り北のボヤカ地区で12年前に見つかり、世界最大の大きさではないかと当時から話題になっていました。ところが、コロンビアは、反政府ゲリラとの内戦が40年以上にわたって続いていて、これまでは治安が極度に悪かったため、国外で展示されたことはあったものの、国内では公開できなかったということです。コロンビア政府がアメリカの支援などを受けてゲリラの掃討に力を入れ、治安が回復してきたことから、今回の展示が実現しました。鮮やかな緑色の輝きを放つこのエメラルドは、採掘された地域に住む先住民族の伝説上の女王の名前から、「フラ」と名付けられています。コロンビアの宝石業者は「これほど大きな塊となると、値段は想像もできない」と話しています。



これを、関西弁に直す場合、実際殆ど変更しなくても関西弁の文法の枠内に収まってしまう(これが関西弁の文章語の自然な姿であり、このようにあるべきだと主張するわけではないが)。
強いて言えば、否定形を
「値段は想像もできない」→「値段は想像もできぬ」(かなり古風だが)
「公開できなかった」→「公開できなんだ」(共通語に浸蝕される以前の形)
とするくらいだろうか。(勿論アクセントは京阪式に変えて読み上げなくてはならないけれど)

これを、首里・那覇「方言」にすると、会話口調を全く使わなくても、
別の言葉にならざるをえない。

翻訳結果

・世界最大ぬエメラルド公開

重さ2キロ余いんでぃぬエメラルドぬ結晶ぬ、南米コロンビアんぅじ開かっとおる見本市をぅてぃ展示さっとおいびいん。コロンビアぬ宝石業者あ「代や想像ん成らん」んでぃ話そおいびいん。

くぬエメラルドお、コロンビアぬ首都ボゴタんぅじ開かっとおる国際的な鉱物ぬ見本市をぅてぃ17日から展示さっとおるむんやてぃ、重さぬ2キロ余いあいびいん。ボゴタから70キロ余り北ぬボヤカ地区なかい見い付きらってぃ、世界最大ぬ大さやのおあらにんでぃ当時から話題なとおいびいたん。やしが、コロンビアあ、反政府ゲリラとぅぬ内戦ぬ40年以上にわたてぃ続ちぇえてぃ、くりまでえ治安ぬ極度に悪さたくとぅ、国外をぅてぃ展示さったるくとおあたるむんぬ、国内んじえ公開成らんたんでぃぬくとぅやいびいん。コロンビア政府ぬアメリカぬ支援んでえ受きてぃ、ゲリラぬ掃討んかい力入ってぃ、治安ぬ回復っしちゅうたるくとぅから、今回ぬ展示ぬ実現しゃん。鮮やかな緑色ぬ輝き放ちゅるくぬエメラルドお、採掘さりいたる地域なかい住めえいる先住民族ぬ伝説上ぬ女王ぬ名前から、「フラ」んでぃ名付きらってえいびいん。コロンビアぬ宝石業者あ、「くりあたい大さぬ塊ないれえ、代や想像ん成らん」んでぃ話そおいびいん。


…これでも、漢語はそのまま使うなど、たとえ自然さを犠牲にしても
できるだけ共通語に近付けてあります。
あと、漢字のおかげで差異が小さく見えてもいます。
(「重さ」は「んぅぶさ」、「大さ」は「まぎさ」と読む。熟語まで沖縄読みを徹底させると違いはさらに大きくなる)

関西方言と沖縄語の中間的な例であると思われる東北・九州の方言で同じように実験したらどうなるんでしょうか。津軽とか、薩摩だとかなり原稿に手を入れないといけない気がしますが。
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by bulbulesahar | 2011-06-19 01:11 | ウチナーグチ(沖縄語)

沖縄語か沖縄方言か   

一般にある言葉を方言とするか独立した言語とするかの境界は
現実の用法においてあいまい、というか政治的な事情などが絡んで恣意的な部分がある。

日本語グループの中の本土方言と対置される琉球諸方言も、
本土方言が「日本語」とされた場合に「琉球諸語」といえるかどうかが問題になる。

「地方」の方言にれっきとした言語の地位を与えるのを(ときに上述の恣意性に開き直る形で)
嫌がる人もいれば、特に沖縄では「方言じゃなくて言語だ」という主張とともに、
「こんなの日本語じゃねえ」との中央側の声に対して
「沖縄方言だって日本語の一部なんです」という物言いがなされることも十分ありうるだろう。
日本が単一言語国家を標榜して、言語的多様性は国民形成・国家統合の妨げになるものとして、
尊重されることが極めて少なかった近代以降の歴史がここにも複雑に反映しているようだ。


ただ、ここ2月ほど琉球方言の中の沖縄言葉(の那覇・首里方言)を勉強してみた感想は、

「方言とするには言葉の違いが大きすぎる」

そして本土の人間で沖縄言葉を学んだことのある人はほとんど同様の感想を持つだろうと、
かなりの自信をもって言える。

方言を実際に聞きながら特徴的な音韻変化や言い回しや語彙を習得していけば、
比較的容易に理解ができるし、正確なアクセントはともかく話すこともできるという
本土の大部分の方言に当てはまるような状況は沖縄言葉には全く当てはまらないといえる。

共通語:それをするのは、どうしてもできませんでした。
沖縄語:うりすしえ、ちゃあしんないびらんたん。


沖縄語とて、文法形式は共通日本語とほぼ同じなのだが、
たとえ音声が完璧に聴取できたとしても
語彙に加えて助詞、助動詞、活用語尾などの機能語の差異が大きいために、
ただ聞くだけでは理解の取っ掛かりがつかめない。
結局、別の言語として音韻・文法・語彙などを一から体系的に学ぶ必要があるわけである。
例えば「それ+を+する+の+は」は 「うり+(対格は助詞なし)+す+し+え」と分解すれば、
互いに対応していることがわかる。但し「す」は連体形ではなく単純形(終止形から「ん」を落とした形)だし、係助詞「は」がいつも「え」に対応するわけではないのだが。 



それにしてもこの独立言語と方言の境界、言語の内在的な特徴に立脚した
もう少し客観的な基準がないものか考えてみたいものである。
「A言語ネイティヴが、B言語を習得するのに体系的学習が必要か否か」
というのはその候補となりうる気がするが、
実際「体系的学習が必要になるか」は個人差もあるし、
その判定は長期の追跡が必要だろうから、なかなか難しいかもしれない。
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by bulbulesahar | 2011-04-26 02:32 | ウチナーグチ(沖縄語)